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いま米国はその「反面教師」日本の二の舞いを演じているようにみえる。
B政権が打ち出しているのは減税など財政刺激と金融緩和である。 日本の金融危機でもみられた奉加帳方式にも矛盾がある。
九八年の米大手ファンドの危機ではM・ニューヨーク連銀総裁の呼びかけで金融機関に奉加帳が回り危機を脱した成功体験がある。

しかし、いまのサブプライム危機は深度が違う。
危機に直面する金融保証会社、モノラインの資本増強で巨額の損失を抱える金融機関に奉加帳を回すことに無理はないか。 金融危機打開の切り札はやはり公的資金の注入など公的関与だろう。
P財務長官は公的資金注入について「(ほかの国はともかく)米国にはあてはまらない」と強調する。

しかし、米国にもS&Lの処理に公的資金が導入された歴史がある。

範があっても、は限界がある。 B議長は利下げの継続を鮮明にする。
たしかに金融危機に利下げは有効だ。 長短金利差を広げることで批判を浴びずに金融機関に「見えざる補助金」を供与できる面もある。
しかし原油価格高騰でインフレ懸念が強まっている。 利下げ機運はドル急落につながる。
金融緩和もジレンマに直面する。 P財務長官がまず強調するのが金融機関の資本増強だ。
米国経済に広がるキャピタル・クランチを防ぐうえで優先課題になる。 そのために産油国やアジアの新興市場国の政府系ファンドからの出資を歓迎する。
しかし政府系ファンドへの依存が高まれば高まるほどあつれきも強まる。 どんな透明な行動規あっても、国家戦略を担う国家マネーであることに変わりはない。
「国際公的資金」依存に悪夢は現実になった。 ねじれ国会のもとで日本銀行総裁の座が第二次大戦後初めて空席になり、日本という国の信認は失墜した。

しかも米国発の金融危機はG前FRB議長が「第二次大戦後で最悪」と警告するほど深刻化している。 市場の自由は大前提だが、深刻な金融危機による明白な市場の失敗には、何らかの公的関与は避けられない。
それをためらって、いたずらに財政、金融政策の刺激だけを続ければ将来にツケを残す。 適切なマクロ政策と合わせて、病巣にメスを入れる金融対策が必要だ。
市場の失敗に政府の失敗が重なる悲劇を日本はいやというほど味わった。 米国の金融危機は即グローバル危機である。
大統領選下で動きにくい面はあるかもしれないが、ここで米国が迅速かつ大胆に決断し実行しなければ、J氏が警告したように「ドルの時代の終わり」になりかねない。 日本の通貨当局もまた日本の金融危機の教訓を米国に伝える歴史的責務がある。
グローバル危機を防ぐために、日本からの国際発信こそ求められる。 N銀総裁人事を政局にからめて、いたずらに国際信認を傷つけているときではない。
非常時に異常事態を招いた政治の機能マヒにはあきれる。 N銀総裁人事を政局にからめN銀の信認を傷つけた与野党の責任は重大だ。
N銀の危機は日本の危機である。 問題はそれがグローバル危機を増幅しかねないことだ。
信認回復は至難だが、せめて一刻も早く日本経済の操縦梓を握るN銀総裁を決め国際責任の一端を担うべきである。 経済記者として四十年近く日米欧のC銀行を脇から眺めてきたが、C銀行総裁が決まらない事態は思いもよらなかった。
この国は成熟国ではなかったのかと頭を抱えたくなる。 N銀総裁といえば、威厳ある存在だった。
戦後の復興期、法皇と呼ばれたI総裁の記者会見では記者は起立して総裁を迎えたという伝説も残る。 駆け出しのころ、最初に会ったM総裁は映画評論家のY氏に似ていたが、近寄りがたいものがあった。
大蔵省時代、国会答弁で野党議員をしかりつけて問題になった硬骨漢だ。 記者会見では質問を受けると、パイプに火をつけて一呼吸置いてから、ゆっくり答える。

そのしぐさがかつこうよくて記者クラブで一時、パイプがはやったほどだ。 C銀行総裁の選び方は国によって様々だが、総裁の空席まで政治がもてあそぶことはない。
それ自体、C銀行の独立性を損なうことになる。 FRBのスーパーマン、B議長の後任選びには議論があった。
経済学者には「G説は驚きだ」という声があった。 ウォール街のエコノミスト時代、たびたび取材したである。
そんな米欧のC銀行総裁選びからすると、N銀総裁人事をめぐる論争は異様に映る。 民主党が「武藤敏郎総裁」を不同意にした「財政と金融の分離」論は米欧では聞かない。
財務省経験者が不同意ならP氏もT氏もC銀行トップになれないし、政府に近いというならCEA委員長を経験したG氏やB現FRB議長も問題になる。 財政政策を含む経済政策全体のなかで金融政策を考えるからこそ、独善に陥らず、経験からみても、およそカリスマ性を感じられないこの人物が「P後」を担えるのかと思った。
しかし結局、財務長官と首席補佐官の二人のB氏が強く推してG議長は誕生する。 「G神話」が生まれたのは議長がウォール街の「市場の人」であるだけでなく、ワシントン人脈による「政治人間」だったことも大きかった。
欧州には通貨の守護神を育て上げる戦略がある。 ECBのT総裁は仏大蔵省国庫局長の時代から通貨マフィアとして知られていた。

この時代、取材していて、小さな記事にも目を通すちみつ繊密さには驚かされた。 一九九八年五月、ユーロ創設のためのEU首脳会議はT氏のためにあった。
D初代総裁は任期満了前に退任しT氏が後を継ぐ。 首脳たちが話し合ってレールを敷いた。
ユーロがドルの対抗通貨になった背景には、T総裁の信認を生む欧州の息長い戦略があり、米国発の金融危機は日増しに緊迫する。 米証券大手、B危機のなかで、FRBが日曜日に公定歩合を引き下げるなど切迫感が高まっている。
とても総裁空席のままで乗り切れる状態ではない。 第一に、金融政策のかじをどう取るか。
プラザ合意後の金融政策はほとんど失敗の歴史だった。 唯一、F総裁の五年間は評価に値する。
量的緩和で脱デフレをめざし、金利正常化にも道筋をつけた。 しかし景気が踊り場を迎え、原油、穀物価格の上昇で物価上昇圧力が強まるなかでかじ取りは厳しさを増す。

金利正常化を焦るわけにはいかず、なけなしの金利を下げるのも難しい。
第二に、国際連携をどう進めるか。
七カ国(G7)財務相・C銀行総裁会議に総裁代行の席はあるのか。 国際決済銀行(BIS)総裁会議の夕食会で代行の身では、F氏のような主役の席は与えられないだろう。
B議長やT総裁との日々の連絡調整がぎくしゃくすればグローバル危機は防げない。 第三に、一九九○年代の日本の金融危機の教訓を伝えられるか。
日本は公的資金注入を先送りして危機を深めた。 この苦い教訓を米通貨当局に伝え、公的資金の早期注入をためらうなと訴える必要がある。
それは日本の国際責務である。 独立性が確保される。
経済、財政の幅広いキャリアこそC銀行総裁の条件になる。 それが米欧の常識である。
「第二次大戦後最悪の金融危機」(G前FRB議長)は、グローバル社会全体を巻き込んで、第二段階に移りつつある。 サブプライム危機は「プライム危機」になった。
金融商品を離れた投機マネーは原油・穀物市場に集中し、世界インフレをあおっている。 それは貧しい国々の貧しい人々の暮らしを直撃する。
この米国発の金融危機が世界を変えるのは間違いない。


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